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No.6 「本当はイヤなんだけど」 (前編)
2007-06-06 Wed 00:01
高校生活初めての夏休みが明け、文化祭も盛況の内に終了した。間もなく十月に入るというのに夏の名残は未だ去らず、日陰から踏み出した途端に汗が吹き出してくる。真次郎は忌々しそうに睨みつけたが、太陽は意に介した様子もなく、ギラギラとした輝きを地上に投げ続けている。唯一高くなった空だけが、心細そうに秋を主張していた。
真次郎は木綿の手ぬぐいで汗を拭きつつ、胸中で今後の予定を呟く。
「帰ったらまずは風呂だな。それから唐辛子をピリッと利かせたメシでも作るか…」
真次郎の頭の中に幾つかのメニューが浮かぶ。次いで冷蔵庫に残っている材料、スーパーの特売品リストが閃いて、消えた。
「よし、今日はしらすと唐辛子のガーリックパスタ、それと豆腐のサラダにするか。帰りに買うのは…」
「あれ、荒垣くん」
反射的に振り向くと、平賀慶介という少年が人好きのする笑顔を浮かべて立っていた。
「こんなところで会うなんて奇遇…でもないのかな。ちょうど下校時間だし、通学路だもんね」
確かにここ、ポートアイランド辰巳駅で下校時間に級友と会ったとしても、およそ「奇遇」とは言えないだろう。何しろ彼らの通う月光館学園の最寄り駅であるのだから。
しかし、級友は級友でも、相手が平賀とあればそう評することが出来るかもしれない。というのも平賀は大病院の院長の一人息子であり、車での送迎が常であった。実際に何度か目撃したこともあるし、そういった情報は噂となって飛び交うもので、平賀とさほど親しくない真次郎でさえ知っているのだ。
断っておくと、親しくないと言っても、真次郎が平賀を殊更忌避している訳ではない。元々彼が月光館学園高等部に編入したのは、楽しい学園生活を期待してのことではない。その為級友達とも最小限の関わりしか持たずに過ごしてきた。真次郎にとっての高校生活とは、自分にとって最も貴重なものを支えるべきものであり、大切なものを守りながら自らの青春を謳歌出来るほど、彼はは器用な男ではなかった。また級友達の方でも無口で眼光鋭い真次郎は、どうにも話しかけにくい相手であるらしい。その様な状況のまま半年が過ぎ、必ずしも満足な環境とは言えないが、真次郎もそれなりに納得していたのだが…。
「…何か用か」
ぶっきらぼうな言い方だが、その問いかけは本心から出たものであった。よりにもよって自分に声をかけたからには、深刻な必要性がある筈である。しかし平賀はにこやかに笑って、
「用って訳じゃないんだけど、少しお話したいなって。あ、用事があるならまた今度でもいいんだ」
真次郎は面食らって平賀を見返した。いかにも良家の子弟といった風貌の級友は、信次郎の視線を受け止めて泰然と笑っている。どうやら平賀は、明彦や美鶴とは異なる強さを持っているらしい。興味を覚えた真次郎は予定を遅らせることに決めた。
「いや、構わねェ」
「ホント!?じゃあ、そこのカフェ入ろう。ご馳走するよ」

駅前にあるオープンカフェの片隅、日陰の席を選んで二人は座った。海からの潮風がとても心地良い。注文したアイスコーヒーとグァバジュースが運ばれてくる。氷がグラスに触れて涼しげな音を立てる。ジュースを一口飲んで、平賀は満足そうに言った。
「今日みたいな日は冷たいものが美味しいよね。でも体の冷えには注意して。それからカフェインや刺激物の摂り過ぎも…って、いきなり何言ってるんだろう、僕。ついクセで…気を悪くしたらごめんね」
「いや…」
「そう?良かった」
ホッとして笑った後、平賀は表情を引き締めて尋ねる。
「あのさ…荒垣くんから見て、僕ってどう?」
「…あ?」
「いや、その、荒垣くんは、真田くんと仲いいんだよね」
「腐れ縁だ」
「腐れ縁…」
「お前、随分アキを気にしてるな」
信次郎が訝しがるのも当然であろう。例えば平賀が明彦か真次郎に思いを寄せているというならば、この会話の流れも不自然ではない。しかしそうではないからこそ、真次郎も平賀の真意を量りかねているのだ。平賀はやや考えてから、ためらいがちに口を開いた。
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