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2(P3 SS)
2008-01-02 Wed 19:05
それから二十分ほどが経ち、S.E.E.Sは帰路の途中にあった。七人と一匹が七つの影を落としている。人数よりも少ないのは、体調の優れない天田を明彦がおぶっているからだ。天田は最初断ったのだが、
「よし、こうしよう。お前が大きくなって俺が体調を崩していたら、その時はお前が運んでくれ。それでいいだろう?」
そう言われて渋々了解したのだった。渋々といっても、天田が懸念したのは敬愛する先輩に迷惑をかけることで、明彦に背負われる事自体は決して嫌ではない。広い背中に体を預けながら、未だ明けきらない影時間の空を見上げた。徐々に満ちていく月が、影時間特有のイエローグリーンの光を投げかける。それが明彦の銀灰色の頭髪に当たると、えも言われぬ光彩がきらめいては、散る。天田少年が光のかけらを追うように視線を移す。すると、明彦の上着を抱えた順平と目が合った。
「どうよ、真田サンの乗り心地は?」
「乗り心地って、乗り物じゃないんですから」
「ははは、まあそう言うなって。でもいいよなー、真田サン、オレっちが疲労になった時もよろしくっス!」
「…順平か。そうだな、ウエイトトレーニングにはいいかも知れん。よし、いつでも疲労になって構わんぞ」
「いや、あの、そういうんじゃなくて、なんつーの?オレが言いたいのはこう、思いやりの産物としてで…」
「伊織、何なら私が背負ってやっても構わないぞ」
「え!?い、いえ、桐条先輩のお手を煩わせるほどの事じゃあ、ないっスよ」
「遠慮しないでおぶってもらえばー?あ、分かってると思うけど、変なとこ触ったら”処刑”だからね」
「はぁ!?ちょ、待ってよゆかりッチ。背負ってもらうほど疲れてんのに、処刑って酷くね!?」
「これが日本語で言うところの”泣きっ面に蜂”ですね」
「うん、そうね。でもアイギス凄いね、そんな言葉も知ってるんだ」
「いやいや、アイちゃん、風花、そういう問題じゃなくってサ…。あー、何かオレ、すげー疲れてきたな、気分的に」
溜め息をつく順平の足元で、コロマルが励ますようにひと吼えする。
「慰めてくれんのはお前だけだよ、コロマル」
「そんなことないよ、順平」
背中をポンと叩いて春樹が笑いかける。様々な事があったが、順平と春樹の間には厚い友誼が存在しているのだ。春樹、と呟きかけた順平の耳に、柔らかな声が流れ込んできた。
「順平は二軍だから、疲労にはならないよ。安心して」
「お前は鬼かーッ!!てか、二軍とか言うな!使え!オレっちをもっと使えー!!」
「嫌だ」
「即答すんじゃねえ!!」
二人のやり取りを聞いた天田は思わず吹き出してしまう。その息がくすぐったかったらしく、明彦の肩が一瞬竦んだ。
「あ、ごめんなさい。おかしくてつい…」
頬が緩んだままの天田を軽く見やると、構わん、と答えて明彦も軽く笑う。
「…何か嬉しそうっスね、真田サン」
「順平が二軍なのが嬉しいんだよ、きっと」
春樹がまぜっ返す。恨めしそうな視線を送る順平と飄々とした春樹を見比べて、明彦は軽く苦笑したようだ。
「いや…シンジが見たら安心しただろう、そう思ってな」
軽く頭を振って語を繋ぐ。
「あの事件であいつの心を縛っていたのは、天田の母親の死因が自分にある事だけじゃない。母親を奪った事で、子供らしさや、何より笑顔まで奪ってしまった。憎い仇である自分が死ぬ時まで、笑う事がなかったんだからな」
「…すみません」
「お前が謝る事じゃないさ」
ちょうどポートアイランド辰巳駅に到着したこともあり、背中から天田を下ろすと、茶色い頭髪を軽く撫でた。影時間が明けるには今少しかかるであろう。誰からともなく階段に腰を下ろし、立ち並ぶ棺を見下ろす。だが明彦の視線はその遥か遠く、時間を越えて過去を見ているようであった。
「この辺りに俺とシンジ、そして妹の美紀のいた施設があった。そこが火事になって妹は死んだ…十年前の事だ。あいつはその時の俺を見ているから、家族を失うことがどういうことなのか必要以上に知っていた。だからお前から家族を奪い、人生を捻じ曲げた自分が許せなかったんだろう。せめてお前に適性が認められてからきちんと謝罪出来れば良かったんだが、理事長に口止めされていてな…すまなかった」
口止めの理由は幾つかあったが、その中でも最も大きかったのは、「事件当時の天田に適性があったかどうか不明である」とこいう事であった。もし無ければ性質の悪い冗談であったろうし、あったらあったで些かまずい状況になる。シャドウから救う為とは言っても、実際に手を下したのは真次郎である。それを知って冷静でいられる筈もない。大人びているとはいえ天田はまだ小学生であったし、何より頭で理解している事と心でわかっている事は、まったく別のものであるのだから。
そういった事情で、事件は「知らない方が幸福なもの」として扱うよう、明彦も美鶴も言われていたのである。もちろん二人とも納得はしていなかったが、組織内で唯一の大人であり、まして当事者が自分ではないという事実が行動に制限をつけた。もし自分であれば、理事長の言葉などきかずに謝ったに違いない。適性の有無に関係なく、そうするしかないのは明らかなのだ。だが真次郎の心情を考えると、とても口に出せる事ではなかった。彼は誰よりも自分の罪を責めていた。謝罪して自分の心の負担を軽くするぐらいなら、憎まれた方がいいとさえ思っていたのだ。いずれにせよ、死者は決して甦らないのだから。
「…あの、真田さん」
「うん?」
「妹さんが亡くなったの、この辺りなんですよね」
「…ああ」
「二年前、やっぱりここで僕の母さんが亡くなって、その所為で荒垣さんまで…」
「お、おい、天田」
「ここ通学路だから毎日通りますよね。ただでさえ辛い場所だったのに、僕があんな事したから余計に…」
「お前の所為な訳があるか!そもそも俺はそういう事を言いたくて話をしたんじゃない」
「わかってます。でもここで、真田さんの大切な人が二人も亡くなった…それは事実でしょう?それから、その原因のひとつは僕だってことも。違いますか?」
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